帰宅して電気をつけて辺りを見渡すまで、もしかしたら暗闇に誰かが潜んでいるのではないかという妄想に駆られることがしばしばある。

よもや電気をつけようとするその一瞬に死角に隠れていた誰かが、ないしは玄関を開けた瞬間にきらめくナイフが首筋を一閃。そんなことが想定される。

ところがうんこをしたい場合はこの限りではない。

家の前まで何とか我慢出来たという安心感と便座に座ってうんこをしたいという過去の経験から揺り起こされる欲求とがあいまって、そんな暗闇の妄想など考える余裕が無いほどにせっぱつまった時はとにかく急ぐ。便座へ。一秒でも早く。

そしてすんでのところで便座に腰を下ろし、脱糞の事実に安堵している僕にずぶりという音と共に刺さる刃。